見守る

2010年6月24日

武士道ワンポイント_title2.gif
武士道ワンポイントレッスン
12回目のテーマは「見守る」
陰で見守る、裏で見守る
この言葉を、見守る側と見守られる側で捉え方が違う時が往々にしてあります。
見守る側が見守るという時に起こしやすい過ちは、
『指図をするだけで、責任を取らないでいい立場にいる』 
のに
『陰で見守っている』
と勘違いしている場合です。
自分では陰で助けて、手柄を与えていると思ってしまうのですね。
人は自分で考えて思いついた事をしている時は、不安であっても楽しいものです。
それで失敗して責任を負わされても納得がいきますから、我慢ができます。
しかし、陰で指図され、言うとおりにしないとガンガン言い負かされ、仕方ないから言いなりになったところ失敗してしまった。
この時、陰で見守っているはずの人は、絶対に責任を取らずに、言ったとおりに全てしなかったからだと必ず言います。
これでは、失敗した方は浮かばれません。
 
また追い討ちをかけて困ったことに、見守っているはずの人は、自分の犯している過ちに気づいてないということです。
ガンガン言い負かされという表現を使ったのも、言われる側はこの様に取れているという比喩です。
見守るのと指図するのと勘違いしてごちゃ混ぜ状態になっているのですね。
これは以外と性格的に自分の意見が正しいと思い込んでいる方に多い現象です。
特に現役時代に役職についていらした方は、一度振り返ってみるのも将来を豊かにすることになると思います。
意見を出す人は責任も取る という事を鉄則と心得ること。
そうすれば、陰で意見を出して表に出ないという卑怯な行為は自ずと減ってくると思います。
武士道というと信念が確立されていること、自分の意見を持っていること、信念を曲げないことなどと思っている方が多く感じられます。
確かに必要で素晴らしいことですが、その信念や意見も、今までの生きてきた環境から生まれたものです。
だから、環境が違い、時代が違い、育てた親の考え方が違えば、同じ意見を持っている人の方が少なくて当たり前です。
そのように柔軟に捉えて、相手の意見も尊重する、そして、すり合わせていく行為を忘れないようにすることが良い人間関係を構築していきます。
武士道では、自分の意見と同じくらい相手の意見も尊重する ことが求められています。
さて、話は戻りますが、『陰で見守る』 という行為は、困った時や相談に乗られた時に親身に相手をするということです。
そして、相談に乗り、助け舟で意見を出したのに、それが採用されなかったとしても、それは自分の決定範疇ではないと思い知らぬ振りをしなくてはならないのです。
相談した人は、誰かに困っている事を話して、聞いてもらうだけでオートクラインが起きて、自分なりの案が思いついたりするものなのです。
オートクラインはコーチングでも立派なスキルとされています。
話すことによって自分の中に眠っている考えが呼び起こされて案が思いつくといった現象です。
陰で見守る、つまり、目をかけても手は出さない、これに徹することが出来た人は、子育ても上手です。
子供が夢を現実にするために必要な、想像力と創造力が育つからです。
部下にも同じことが言えます。
指図はマニュアルと同じです。
つまり、見守る側には忍耐が必要だということです。
だから、見守る側も学びをさせられているということなのです。
人生って全て学ぶことに徹しているのかもしれません。

武士道ブログ

武士道協会会報誌